画期的な膀胱がん治療がはじまる

Dr. Ohori

画期的な膀胱がん治療がはじまる

Adstiladrin®は、膀胱がんに対する新しい「遺伝子治療」の一つです。これまでのBCG治療が十分に効かなかった患者さんで膀胱全摘が必要と考えられる患者さんでも今後、膀胱を残せる可能性があり、画期的な治療と思われます。

通常の抗がん剤のように、薬が直接がん細胞を攻撃するわけではありません。Adstiladrin®は、膀胱の細胞に「がんと戦うための設計図(遺伝子)」を一時的に届ける治療です。その設計図を受け取った膀胱の細胞は、インターフェロンα(IFN-α)という、体にもともとある抗がん作用を持つたんぱく質を作ります。このたんぱく質が、1)がん細胞の増殖を抑える、 2)体の免疫(白血球)ががんを見つけて攻撃しやすくすることで、膀胱がんを治療します。

ウイルスを使うと聞くと心配ですが、Adstiladrin®では、治療用に安全性を高めたアデノウイルスを運び役として利用していますので心配いりません。このウイルスは増殖できないように改良されており、感染症を起こすことはありません。役目は、治療に必要な遺伝子を膀胱の細胞へ運ぶことだけです。

治療は、BCGの膀胱内注入療法と同じように、1)細いカテーテルを尿道から膀胱へ入れ、2)薬を膀胱内に注入します。 3)定時間薬を膀胱内に保持した後、自然に排尿します。 3か月に1回程度の投与で治療を行います。

対象となる患者さんは主に、BCG治療を行っても再発した高リスクの筋層非浸潤性膀胱がんの患者さんが対象になります。これまでは膀胱全摘出術が勧められることが多かった患者さんでも、膀胱を温存できる可能性が期待されています。

副作用は比較的軽いものが多く、頻尿、排尿時の痛み、血尿 、尿意切迫感、軽い発熱などがみられることがあります。重い副作用は比較的少ないと報告されています。

当院では3泊4日の入院での治療を予定しています。副作用も少ない治療ですが治療後の尿の処理などが必要で入院がより良いと考えています。 極めて高額な治療(約930万円)なので、まず治療に適しているかをしっかり確認し、高額医療などの対応などをしながら決めていきます。 画期的な治療ですが、対象はあくまでBCGの効果がないと考えられる筋層まで浸潤していない膀胱がんです。筋層まで浸潤している(T2)時には今でも時期を逸せず膀胱全摘をすることが命を守る上で重要です。

膀胱内注入からがん細胞の増殖抑制と免疫細胞の攻撃へ至る治療の流れを示す図。要点を要約した治療の説明。
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