前立腺がんのロボット手術はとても良い手術と思っていますが、最近では若い方も多く見つかり性機能障害が一つの
問題です。以下、患者さんと私の典型的な会話で説明できればと思います。
患者さん:性機能障害が気になります。
私:そうですね、勃起をコントロールする神経(海綿体神経)が前立腺の左右に1本ずつ通っています。両方、片側を温存するか、両方とも温存しない方針に分かれます。
患者さん:どうやって方針を決めるのですか?
私:前立腺がんの場所、大きさ、悪性度などをMRIなどの画像、直腸診の結果、針検査の詳細な内容(場所、悪性度、がんの長さ)で予測します。神経に近く大きな悪いタイプのがんが存在していれば無理をせず、神経は温存しないことをお勧めします。
患者さん:どうしてですか?
私:神経は前立腺を包んでいる膜の中に存在するので、温存するときにはその膜を剥く様に温存しますが、大きながんがあると結果的にがんが取り残されてしまう危険があるので無理はしません。
患者さん:わかりました、それなら両方の神経を切った方が良いですね?
私:がんが無さそうなサイドは温存しても大丈夫です。問題ながんが無さそうで温存しても大丈夫と考えられたサイドを温存して、結果的に予測できなかったがんが存在して、それが取り残されて再発につながることはほとんどありません。残せるものは残す、と言う方針で良いと思います。
患者さん:わかりました。神経を残した結果はどうですか?
私:左右両側の神経をしっかり残せたと思うと、手術後2年後までに80−90%の方が回復し、性交可能となります、片側の神経温存だと成績が落ち、50%くらいになります。手術後はご希望によりバイアグラなどのお薬を使うことがあります。
患者さん:バイアグラはどの様に使うのですか?
私:決まりはありません。米国は極端で手術当日から飲んだり、その後も毎日飲んだりと言うこともあります。ある意味合理的ではありますが、ちょっと行き過ぎ感もあります。バイアグラなどのお薬は保険が効かず、自費になるので一番安い錠剤で1100円ほどになります。多くの方が1−2週間に1度、使っている様です。
患者さん:それですぐ回復するのですか?
私:個人差は大きいです。仮に何となくサイズなどの10%くらいの変化があるとしても、バイアグラなどの薬でいきなり100%にはなりません、40%、50%?の様な変化があります。それを継続することでさらに改善していきます。
患者さん:わかりました。でも希望も特別ないし、やっぱり両方の神経も一緒にとった方が良いですよね
私:神経の温存に関しては、ご希望に沿ってと言うことです。神経の温存は基本的に性機能障害に関連することですが、神経を残した方が僅かに尿失禁の成績も良くなる可能性もあります。