直木賞を受賞した米澤穂信の「黒牢城」(角川書店)を読みました。とても面白かったです。直木賞だけでなく山田風太郎賞を受賞したり、4大ミステリーランキング全て一位になったとのこと、読んでみるとなるほどこれは当然、賞をとる本だなーと感じました。戦国時代の話で、ある武将を中心とした話ですが、常に死を意識しなければならない時代の厳しさを感じました。自分の考え、行動が自分の命だけでなく、家来、家族など多くの人を巻き込む故に、戦略を練りに練って、人々の表情・言葉からも感じ取り、時に騙し騙され。しかし、結果としては負けれて城を取られれば、一族郎党、斬首・張り付け・火炙りになり、何千という人が殺される。約400年前の日本ですが、その後も争いの歴史が続き、生き残った中から今に繋がっているかと思うと不思議な気もしました。殿様から他の殿様への使者は、手紙などを持って行きますが、その内容によっては使者は簡単に殺され、殺して首を送り返すは当たり前、使者は常に死を覚悟して行かなければならない。手紙の内容は言いたいことを簡潔に伝えるというよりは「含み」を持たせ、相手を悩ます。400年過ぎた今、世界中のどこへも電話・メールができ、言いたいことは具体的に時に写真付きで簡単に送れる。自分の周りで出来事を動画で載せ、世界中で起きていることが瞬時にわかる。一方で、もう少し含みを持たせるくらいの間接的な表現が良いのではと思うくらい、辛辣でひどい表現を簡単に相手にぶつける、特に弱いものへぶつける。誰もが常に死を意識する戦国時代に戻りたくはありません。間違いなく平和な時代、特に日本は、だと思います。しかし、インターネット時代はヘタをすると卑怯な戦国時代になりかねないなとも感じます。登場人物の1人の辞世の句:みがくべき心の月のくもらねば ひかりとともににしへこそ行(ゆけ)