ロボット手術適応拡大

Dr. Ohori

ロボット手術適応拡大

 既に前立腺がんのロボット手術は日本を含め世界的に標準の治療です。さらに腎がんの腎部分切除もロボットの利点が生き、標準の治療となっています。また当院でも多く実施している腎盂尿管移行部狭窄症という尿管が狭くなる疾患の腎盂形成術もロボット手術の良い適応となっています。腎盂形成術は古くからある手術ですが従来の開腹手術は患者さんにとっても手術をする我々にとっても大変な手術でした。お腹を大きく切って良い視野を得てしなければなりませんし、細かい形成手術をやってもうまく縫えなかったりと時間がかかり成績も今ひとつという状態でした。その後、腹腔鏡の手術がでてきましたが、腹腔鏡で見ながら、長い鉗子を使って尿管と尿管と縫うのは大変でした。そこで出現したのがロボット手術で、10倍に拡大し、細かい縫合も問題なくできるため、手術時間は短い、術後疼痛は少ない、成績も良いと、とても良い手術になったと思います。膀胱がんの膀胱全摘もロボットでやっています。明らかな違いは出血量の少なさです。以前の開腹の膀胱全摘では輸血がつきものでしたが今では輸血することの方が少ないです。手術後の疼痛も以前よりはとても少ないですし、傷が小さいので以前あった傷の感染もとても少ないと思います。

 この4月から、尿管がんの腎尿管全摘、腎がんの腎摘、副腎腫瘍の副腎摘出などが保険適応となりました。この中でも尿管がんのロボット手術は患者さんにとってメリットが大きいのではと考えています。今までは患者さんの体を横向きにして腎臓の処理を腹腔鏡手術で実施し、その後、体を仰向けにして下腹部を切開して下の尿管と膀胱の処理をしていましたが、ロボットですと、この体位変換はしなくても良いですし、下の尿管の処理をもっと正確にできるのではないかと思っています。最終的に腎臓を取り出すので5cmほどの切開は必要ですが負担の少ない手術になるのではと期待しています。腎摘出、副腎摘出は腹腔鏡手術でも十分対応できる手術ですが、これも少しでも負担の少ない選択肢としてロボットを活用したいと思っています。ロボット手術はとても利点が多いと思いますが、残念ながら保険の点数は据え置き(開腹や腹腔鏡と同じ)なので、結果的にやればやるほど病院が赤字になりかねず、それが普及しない理由の一つであろうと思います。当院でもいろいろやり繰りしていますが厳しいのには変わりありません。とにかく「何が大事なのか」を見失わず前向きにやっていくしかありませんが!?、何とかして欲しい!!

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