100歳時代と言われています。確かに医療の中でも高齢者に対する考えは30年前とは、かなり違うと思います。病気だけれども高齢なので治療はほどほどでという考えは昔からあります。それはそれで単に諦めるということではなく、治療することでの副作用と生活の質とかを考えるとむしろ治療をしないで様子をみましょうが、正解の時もあります。年齢とともに多くの病気が増えていきますが、最終的に排尿・排便で多くの方が問題を抱えます。そこで今回は尿失禁について考えていきたいと思います。まず、尿失禁で困っている人がいかに多いか、について説明します。以下、各報告からの抜粋です。
1)一般に在宅者の10%、病院・老人施設入所者については50%に尿失禁がみられる
2)日本では1993年時点で約400万人の尿失禁患者がいるといわれている。
3)急速な高齢化社会化で、50年後には約1,000万人の高齢者が尿失禁を有すると推計される。
4)年齢とともに増加し、本邦では60歳以上の50%以上に尿失禁を認めるとの報告がある。女性では40歳代から増加している。4回以上の分娩経験者は経験なしと比較し4倍以上に尿失禁を認める
生活上、困るような尿失禁の方は病院を受診することが多いですが、そこまで行かなくても少量の尿失禁を認め、ご自分で「まあ、年相応」と判断して病院を受診しない方も沢山いると思います。私が医者になった36年前と現在では尿失禁に対する治療方法はだいぶ異なり、現在では薬も沢山ありますし、各種手術も充実してきました。治療方法を考えるときに我々、泌尿器科医は尿失禁の原因とタイプを考えます。原因には、加齢・男性の前立腺肥大症・女性の臓器脱・糖尿病による末梢神経障害・骨盤内手術:前立腺がん、直腸がん、子宮手術後・脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷・トイレへの移動障害:認知症、寝たきり、などがあります。またタイプには腹圧性、切迫性、溢流(いつりゅう)性、機能性があります。次回からそれぞれを説明していきます。