ロボット手術は今や標準手術となり、日本では約600台のロボットが稼働しています。ロボット手術は拡大して、良く見えて、痛みも少ない、機能を残しやすい、入院期間も短かくなると良いところばかりです。ですから当院でもロボット2台を使用し多くの手術を実施しています。従来から言われているようにロボット手術の欠点といえば、その価格の高さ、運用費、保守費の高さです。そそて病院の収入源となる保険点数は、その価格の高さをカバーするほど高くないので、その結果として 特に日本有数のロボット手術を実施している当院のような病院は典型的で、頑張っても頑張っても、という感じになっています。願わくば、普通に頑張れば分だけカバーされる保険点数になって欲しいと思います。 今回は、そういった経済的な側面でなく、最近感じたロボット手術普及の弊害というか副作用かと思われることを感じました。泌尿器科では主要な前立腺がん、腎がん、膀胱がんなどの大きな手術はロボット手術が主流であり、ほとんどの大学病院やその他の大きな病院でもロボット手術が中心となっています。既に日本にロボット手術が導入され20年が経ち、普及していますので、若い先生のみならず中堅の先生もロボット手術はやっているが開腹手術の経験はほとんどないという状況になっています。主ながんの手術以外で、ロボット手術は適応となっていないけれど、手術が必要な場合があります。典型的なのは尿管が狭くなる病気です。一番多いのは婦人科の手術の影響・子宮や卵巣の病気の影響で尿管が狭くなってしまうのですが、狭くなると尿が通りませんから腎臓が腫れて腎機能が落ちます。腎臓は左右に1個ずつありますので片方が機能が落ちても表面上は「腎不全」と呼ばれる様なことにならないことも多いです。そんな背景もあり泌尿器科医であっても、のんびり構える医師もいます。しかし、実際は問題が起きていて、それを解決する方法の基本は手術となります。手術は狭い尿管を切って、尿管と尿管を繋ぎ直したり、尿管と膀胱を繋いだりと、形成手術の部分が大きい手術です。従って、開腹手術の経験の乏しい若手・中堅医師、へたをすると教授級の医師にとっても敷居の高いものとなってしまいます。こういった背景からか、大学病院からとか、遠方の大病院から当院への紹介が増えています。紹介頂いて当院で患者さんに貢献できることは大きな喜びですが、一方で、どうして紹介元の泌尿器科でやらないの?と毎回感じてしまいます。悪くいえば腰が引けてるということなのだと思いますし、良くいえば患者さんのためにはより経験のある病院へ紹介しましょうということなんだと思います。消化器外科、救急、婦人科の医師が減少傾向で、ますます外科的リスクを取らない傾向が続いています。ロボット手術を中心とする当院ですが、「外科手術」という大きな意味でも可能な限り貢献できればと思います(と同時に保険点数上げてくれーの心の叫びを聞いて欲しい!)。