新しい前立腺がん画像診断:PSMA-PET

Dr. Ohori

新しい前立腺がん画像診断:PSMA-PET

PSMAは前立腺特異的膜抗原(prostate specific membrane antigen)と呼ばれる、前立腺の表面に存在するタンパク質のことです。前立腺がんでは、このPSMAが過剰に出ています。このタンパク質に結合する分子を放射性物質(68Ga)で標識した薬剤(放射性薬剤)を注射して その後PET検査をすると小さな前立腺がんであっても従来の画像診断であるCT・MRI・骨シンチより精度に検出できます。要は今までわからなかった小さいがんがわかるようになったということです。このことが実際の臨床に与える影響は極めて大きく、前立腺がんのいかなる状況でもこの検査をすることで治療方針が変わる可能性もあります。既に欧米では多く使用され ガイドラインにも載る様になりました。以下の表は2022年に提唱されたPSMA-PET検査を適切に使用するための基準です。どういう状況で有用に使われるかをスコア(2〜9点)で表しています。前回説明した様に前立腺がんの手術をした後にPSAが再上昇する時が最も有用の9点となっています。同様に放射線治療後のPSA上昇も9点となっています。もう一つPSMAターゲット治療が9点ですが、これは日本でも数年後に利用可能となると思いますがPSMAを利用した治療で、当然この対象の方はこの検査の良い対象となります。一方でPSMA-PETがあまり意味がないであろう(2−3点)と思われるのはいわゆる前立腺がん疑いです。PSAが少し高い、超音波やMRIで疑われ針生検をするか・しないか、あるいは予定している方が この検査を受けて方針が変わることはあまりないであろうと言えます。また、既に前立腺がんと診断されていても超低・低・中リスク(内容が低リスクに近い)では検査の意味はあまりないと言えますので、従来の手術・放射線治療・経過観察などから選択して治療することになると考えます。 その他の状況でも「多分妥当性あり」とうする状況が多く、対象となると思います。 現状では日本でPSMA-PETができる施設が少なく、今後少しずつ普及していくものと思いますが、やや混乱をきたす可能性があります。検査したいのに中々できない、検査場所が遠すぎる、高い(25万円)などです。この検査はとても良い検査で今後は中心になっていく(骨シンチなどが要らなくなる?)と思われますが、現在の各種治療が悪いわけでなく その選択に関わっていきますので患者さんは冷静に担当の先生と相談して欲しいと思います。

PSMA-PETの適切な使用基準

妥当性スコア病気の状況
あり全摘手術後にPSAが下がらない、下がったが再上昇
あり放射線治療後にPSAが最低値になったが最上昇
ありPSMターゲット治療を検討している
あり新たに診断された中・高・超高リスクの患者
あり新たに診断された中・高・超高リスクの患者で従来の画像診断(CT・骨シンチなど)で陰性・不明瞭・微小転移の可能性
あり従来の画像診断(CT・骨シンチなど)で転移のない去勢抵抗性前立腺がん
多分ありFocal治療後のPSA上昇
多分ありPSMターゲット治療を検討していない転移のある去勢抵抗勢前立腺がん
多分あり治療の効果の評価
多分あり新たに診断された前立腺がんで従来の画像診断(CT・骨シンチなど)で広範囲の転移が確認された時
多分なし前立腺がん疑い
多分なし超低・低・比較的良好な中リスク前立腺がん

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