先日、「ロボット外科医からみた今後の医療」を青月社から出版しました。この本は最初に当院の成り立ちを説明し、その後、現在の医療(病院)の現状(赤字だらけ)、その背景などを説明し、今後を私なりに占った本です。この本は当院の関係者、現在の新病院へのプロジェクトの関係者への配布目的に作ったもので本屋さんでは売っていません(ご希望あれば当院にご連絡ください)。 問題山積の医療の問題を広く扱いましたが、深掘りできなかった問題が医師偏在です。医師が都市へ集中し地方で足りなくなる医師偏在の背景には様々な原因がありますが、最も大きな原因は2004年から始まった新研修医制度、それに伴う医局制度の衰退です。これは多くの医師の間では常識的な話であり、また種々公的な報告もあります。古くは教授を頂点とする医局の力が絶大で、強力な人事権を持っていましたから、教授の号令のもと、医局から1〜数年単位で地方に出向していました。昔は医者仲間で「〜どこそこに飛ばされた」という話が良くありました。医者も当然、家族を持っていますから、一般会社と同様にいきなりな遠方への出向は悲喜交々いろいろありましたが、ほとんどは出向先での収入はむしろ上がり、環境も劣悪ということではありませんでしたので、多くが一時的な我慢というレベルで話されていました。
新研修医制度となってからの変化は劇的で、1)昔は出身大学の医局に残ることがほとんどしたが、今は出身大学へ残るのが40%ほど、他大学へ行くのが20%、残る40%が一般病院へ行く時代になりました、一般病院は医師集めの目的もあり、条件(給料など)も良く、頑張って教育しようというシステム作りもありますので医師に成り立ての若者にとっては魅力的です。そのまま一般病院に根付く人もいますが、また大学へ戻る人も多くいます。いわば卒後の進路の自由度が増したと言うことです。2)医局制度の崩壊だけでなく時代の変化とも言えるかもしれませんが、昔は医学博士の称号を得るために基礎研究・臨床研究をして立派な論文作りをして審査ののちに医学博士となっていました。今のこのシステムはあるものの、専門医制度がしっかりしてきたので専門医・指導医になるための勉強・学会活動はするものの、医学博士になろうとする人は激減しました。以前は、教授をはじめ准教授・講師の大事な役割として博士論文の指導がありましたが、今はかなり少なくなっていると思います。この結果、大学院進学者も激減していると思います。これらのことから医局の強力な力は弱くなりました。
また、日本独特かもしれませんが、医療ミスがメデイアに大体的に報道され、もともと責任重大な仕事にさらに圧力が加わっているので、若い経験の浅い医師が武者修行でいきなり単独で地方に行こうとも思わなくなりましたし、派遣する側も無理はしなくなったと思います(良いことですが)。当然、医師が沢山いて、一人一人の責任はやや軽減されるかもしれない、教育システムの存在するであろう、都会に集まるのが自然となっています。
時代の流れもありましたが、医師偏在を加速させた新研修医制度の功罪の罪の部分は大きいと感じます。国は地方への医師の供給を促進するために大学病院に地方へ医師を派遣することを条件に保健点数の加算をしたりしています(医師の愚痴が集まるサイトでは20年前に実施した研修医制度の尻拭いなど激しい批判があります)が、この流れは中々止められないのだと思います。