留学話7:緊張した発表

Dr. Ohori

留学話7:緊張した発表

米国へ行く前、北里大学の研修医時代も数は少なかったですが学会発表したことがあり、そのたびに緊張したことを覚えていますが、米国では研究生活でしたので自ずと発表しなければならず、かなりの数の発表をしました。中には米国の泌尿器科学会総会の大会場で何千人の前でも発表する機会がありました。もちろん大緊張ですが、何千人いても発表内容は自分が一番詳しいと開き直れたのを覚えています。数ある中でも最も緊張し、自分の英会話能力の無さを痛感した発表がありました。MSKCCのSidney Kimmel 前立腺診断センターという新しいセンター、新しい建物にセンター副所長というポジションをもらい働いていましが、私の給料の大半はSidney Kimmelからの寄付で成り立っていました。Sidney Kimmelはアパレル産業などなどを営む米国の大富豪の一人です。ある時、急にボスが「マック(私の呼び名)、明日、Sidney Kimmelの一家が来るので発表してくれ」と。その時は意味がわかっていませんでしたが、翌日、会場に行ってみると、沢山の食べ物が置いてあり、ボス自ら食事を分けたり、コーヒーを入れたり、お客さんをもてなしています。お客さんは10人くらいでしたが、明らかに紳士淑女の集まりで、Sidney Kimmel centerのSidney Kimmelさん達だから、この一家から、私の給料を含め多大な寄付をもらってということを、その時始めて実感しました。この人たちの前で発表! これはやばいーと感じましたが準備したものは何とか発表。しかし、お客さんから「どっから来たんだ」「日本からここに来る意味は何?」「得たものがあるのか?」などと当然といえば当然ですが質問の嵐、しどろもどろで何を答えたかわかりませんでしたが、途中からボスがカバーしてくれ、穏やかな感じで終了。しかし、直後はこれでもう給料が出なくなるのではとドッと疲れました。普段から公平・平等な人間関係だなーと思うことが多い米国ですが、この時はやっぱり多大な寄付(多分、何十億)相手では気を使うんだーと。

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