井の中の蛙のガイドライン

Dr. Ohori

井の中の蛙のガイドライン

今は、ガイドライン全盛時代です。どんな分野もガイドラインを作って患者さんにとって何が良い標準的な診断方法なのか、治療方法なのかを説明します。これは世界中の臨床家や研究者の経験の塊みたいなものでとても重要です。ですから、あまり前立腺がんを多く診ていない臨床家もガイドラインを見て、そっくり同じことをやれば大きな間違いはないし、多くの患者さんも良い結果がもたらされます。しかし、「空の深さ」を知る専門家はガイドラインの過不足を感じて分かっていますから、目の前の患者さんにとって何が良いのか、ガイドラインを参考にしながらも別な答えを探します。別な言い方をすれば、ガイドラインには「空の深さ」の全ては網羅されていないということです。全てを網羅するガイドラインを構築すべく努力するのはとても大事ですが、経験の豊富な臨床家が若い先生にお願いするのはガイドラインの暗記ではなく、その利点・限界を示して引き出しを増やす方向性を示すことだと思います。

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