良く患者目線で、という言葉がありますがそう簡単なことではないと感じます。だいぶ前、たくさん当直をやっていた時に、朝方4時、5時に喘息の患者さんが来ると「しっかり薬飲んでください」とどうも説教口調で対応していた気がします。ところが41歳で自分が喘息気味になってからは、喘息発作の苦しさを分かっているので「苦しいよね、薬なんて忘れるよね、今、点滴で楽になるからね」と途端に優しくなったと思います。今、多くのがん患者さんを見ているのは、病気になったこともない健康な若い医師が中心です。それはやむを得ないことで、そうあるべきでもあるのですが、結果として勉強ばかりで人生経験も浅い若い医師は病気は見るが病気を抱えた患者を見ない、という状況も生まれます。さらに良くないのは、そういう環境の中で論文を書くことに情熱を燃やし、患者を見ない人が大学で間違って偉くなってしまう。時々、これは一体どうなってるんだろうと思わせる医療事故が報道されます。その背景には患者を見ない人が上層部にいる状況があると思います。米国の全て良いとは全く思いませんが、私が関わったスタッフは偉くなればなるほど、謙虚で、とても紳士的で、さらにとても細かいことまで触れる患者目線を持っていました。日本の在宅医療の現場で働いている人もかなり優秀で患者目線で考えていると思います。医師も看護師も経験豊富で、在宅医療を始めてから患者目線を始めたのではなく、もともと患者目線の人が志したのではないのかなーとも感じます。毎日、慣れない院長業で大小の問題に追われていますが、自分自身、患者目線を肝に命じて今後も行かねば、病院を開設した意味も?だと思っています。