前立腺がんの5年生存率は100%, 10年は98.8%という結果が報道されました。全体的にがんの生存率も改善傾向とのことです。前立腺がんは膵臓がんや肺がんと異なり、全体的に成長はゆっくりであり、診断された後も治療をすぐしない経過観察という手段を含めて色々な選択肢があります。しかし、いくらゆっくり進行すると言っても相手は悪いもので最終的に命の問題も出てきます。日本ではがんの死亡率の6位となっています。我々も多くの早期がんの方を手術していますが、一方で診断時から転移がある進行がんの方も多く診ています。ですから実際は生存率10年で98.8%と言っても何もしない、しなくていいという意味ではありません。手術や放射線治療も良くなりましたし、新しいホルモン剤や抗がん剤も出てきて、その結果がさらに生存率を向上させていると言って良いと思います。
昔からスウェーデンなど北欧から前立腺がんに関する質の高い報告が出ますが、以前、手術をした人としないで経過観察をした人の死亡率の差をみて、5〜10年後まではさほど差がないのですが10年を過ぎると差が大きく広がるという(経過観察のグループにがん死が多い)報告がありました。多くの方が診断された時に治療方法を悩みますが、中には「太く短く」でいいから何もしないと考える方もいます。それはそれで間違いではありませんし、良悪ではないと思います。しかし私の返事は「5年後、10年後もすぐきます、その時悔やまないような決断をして下さい」です。お若い方は特にそうですが1年後、3年後だけではなく10年後、15年後以降のことも考えて決断する必要があります(容易ではありませんが)。
世界一、ロボットの前立腺の手術をしているフロリダのパテル先生が中心になり、世界中の専門家によるウェブ会議を実施して、コロナの状況の中でいかに前立腺がんを治療するかというコンセンサスを作る会議を実施しましたが、結論は3−6ヶ月以上の遅れは結果を悪くする可能性があるので、診断後は適切な早い時期に治療すべきとのことでした。私も賛成です。とても難しい時代に名yってしましましたが、胃カメラ、大腸カメラ、レントゲン、PSA採血などで、日本で多い病気、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんは早期発見すべく、検診や人間ドックが大切だと思います。