前立腺レクチャー:PSAとは?

Dr. Ohori

前立腺レクチャー:PSAとは?

PSA(prostate specific antigen、前立腺特異抗原)は採血してわかる腫瘍マーカーの中でも優れたマーカーの一つです。前立腺の疾患でしか上昇しませんのでわかりやすい(他の悪性腫瘍であがることはない)のですが、前立腺がんだけでなく前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇します。元々、日本の法医学に医師が発見した物質に由来するとも言われていますが、1979年Wangが前立腺から抽出したと言われています。PSAは酵素として、精液のジェルを形作る蛋白をターゲットとし、精液の液状化や精子の可動性を促します。世界的に4.0が正常・異常の境界と言われていますが、日本では3.0くらいが妥当ではないかとも言われています。また、米国では2.5を境界にしようとも言われています。グレイゾーンと言われる4から10までの人を検査すると20−30%前立腺がんが発見されます。10−20だと40−50%、20以上だと半分以上が前立腺がんです。また、初めてPSA とり結果が何百、何千という事もあります。その場合、ほぼ100%前立腺がんで、しかも前立腺の中にがん細胞がとどまらず、リンパ節や骨へ転移した状態です。つまり、前立腺がん細胞は転移した場所でもPSAを出し続けますので異常な高値となります。できたら、50歳を過ぎたら一度はPSA採血をして欲しいですが近親者に前立腺がんの方がいる時には少なくとも45歳から一度採血してPSAを測って欲しいと思います。PSAは前立腺に特異的ですから、治療後の指標にもなります。手術が一番わかりやすいですが、手術で前立腺をとってしまうと、PSAを出すものがなくなりますから約6週間後にはPSAはほぼゼロになります(測り方の性質上、ゼロではなく0.01以下とか0.008以下という表示になります)。 ですから手術後、5年以上にわたりPSAが0.01以下であれば完治したということになります。また、PSAが0.1、0.2と上昇すると再発ではないかということになり、追加の放射線治療や内分泌治療をしたりします。放射線の場合、前立腺はそのままですので解釈が難しいですが、治療後例えば0.1まで低下し、その後2.1以上(プラス2.0)になると再発ではないかと定義されています。 なぜ、がんでPSAが上昇するかというと、前立腺の中で作られるPSAが、がんにより不整な上皮の基底膜を通り、毛細管やリンパ管に流れ込むためと言われています。 30歳代の人でも人間ドックでたまたまPSAを測ったら高かったということで病院を受診することがあります。30代で前立腺がんが見つかることは極めてまれで前立腺の炎症であることが多いですが念のために検査はします。

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