点を繋げる

Dr. Ohori

点を繋げる

ちょっと行き詰まった時、力が出ない、元気が出ない時、本を読んだり、YouTubeで歌を聞いたりしますが、自然に定期的に見るのがMacの創始者であるステイーブン ジョブスのスタンフォード大学卒業式でのスピーチです。ジョブスは大学を中退したので「卒業式に出るのは初めてだ」から話が始まります。そして3つのことを伝えたいと話し、最初の話が「点を繋げる」です。大学に入ったものの講義は面白くなく、親が必死に稼いでくれたお金を垂れ流しているだけだと感じた彼は大学を中退します。その後、興味を持ったカリオグラフィーの講義に潜り込み勉強します。そのカリオグラフィーが後にマッキントッシュのコンピュータの豊富なフォントに入ります。私自身、最初にマックのコンピュータを買い仕事を始めた当初、遅い、良く止まるのに戸惑いましたが、フォントの多さに驚いたのを覚えています。ジョブス曰く「大学を中退する決断は人生の中でも最も良い決断だった」。聴衆は苦笑いですが、確かにその決断がその後につながり、振り返って見ると「その時の決断・経験がその後に繋がっている」ことは多いです。私は1990年にベイラー医科大学へ留学し、ヒューストンに着いた翌日から外来でくる日もくる日も前立腺の超音波をしていました。その当時、超音波自体が大切な診断でしたし、研究の対象でしたので意味がない仕事だとは感じていませんでしたし、何しろ「意味?」を考える余裕すらなかったと思います。ヒューストンの4年間は毎日のように超音波の仕事をし、ニューヨークに行ってからも継続しましたので数千人の前立腺を触り、超音波で見ました。その経験が今の自分の前立腺診療への自信や考察にこんなに役立つとはその当時、全く想像していませんでした。ジョブスは「点と点の繋がりは予測ができません。あとで振り返って点の繋がりに気付くのです」とそして「今やっていることがどこかに繋がると信じて下さい、その点がどこかに繋がると信じていれば他の人と違う道を歩いていても自信を持って歩き通せる」と。

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