前立腺レクチャー5:診断の流れ

Dr. Ohori

前立腺レクチャー5:診断の流れ

下の図に前立腺がんの診断の流れを示しました。かなり前(30年前ー)は血液検査のPSAがありませんでしたので骨転移のよる腰痛やひどい排尿障害や血尿を契機に前立腺がんが発見されることが多く早期前立腺がんは少なかったのです。現在は人間ドック、検診あるいは泌尿器科の外来でPSAを検査して見つける早期がんが圧倒的に多くなっています。PSAが高い(4以上、実は日本人は3以上が良いのではないかと言われています)、直腸診で硬く触れる、超音波検査でがんを疑う、何かが異常であれば、いきなり針生検をしても間違いではありませんが、現在は前立腺のMRIをしてから、最終的に生検をするかどうか決めることが多くなっています。しかし、これは程度問題で、例えばPSAが50以上もあり、直腸診で硬く触れるのにMRIが絶対必要ということではありません。

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一方で、PSAが軽度高いのみで直腸診も正常、超音波も正常、さらにMRIも明らかにがんを疑う所見なしということであれば、すぐに針生検をせずに様子を見る(その後も定期的にPSAを検査していく)こともあります。しかし、PSAが10を超えていくようであれば、いずれの検査が正常であっても針生検を勧めることが多いと思います。直腸診と超音波は基礎となる検査ですが主観的ですし、MRIも完璧ではありませんので。

 針生検でがんが発見された場合は、転移の有無を調べる検査をします。前立腺がんは骨と骨盤内のリンパ節に転移を起こすことが多いので、骨を調べるために骨シンチグラフィーあるいは全身MRIをし、リンパ節転移を調べるためにCTをします。骨転移を起こす可能性が低い低リスクや中リスクの前立腺がんの方は必ずしも骨シンチグラフィーを受ける必要はありません。また、通常はCTは造影剤を使用しない単純CTでも十分ですが、高リスクであったり、単純CTでリンパ節転移が疑われた場合には造影剤を使用するCTを実施したりします。

 転移がある場合は、治療方法として内分泌治療が選択されます。内分泌治療は内服薬と注射剤ですが男性ホルモンを下げることで前立腺がんを押さえ込もうという治療で、前立腺だけでなく転移にも効果を示します。転移がないと1)手術、2)外照射、3)内照射(小線源)、4)内分泌治療、5)経過観察(PSA監視療法)の5つから治療方法を選択します。一つ一つの治療方法はまた別な機会に説明したいと思いますが、早期がんの方はこれらの5つの選択するのに皆さん悩まれます。通常は針生検で結果が出てから、1、2週間で治療をしなかればならないということはありませんので、十分に検討し、必要であればセカンドオピニオンで他病院の意見を聞いてから選択してもらいます。

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