子宮内膜症について
子宮内膜症とは
子宮粘膜と同じ細胞が子宮粘膜以外の場所に発生した腫瘍をいいます。子宮の筋肉層に発生するもの(子宮腺筋症)、卵巣内(チョコレート嚢胞)、卵巣外、膀胱や腸の表面や粘膜、その他体内の信じられない部位にも発生することがあります。この病気は女性ホルモンの作用で増殖・縮小します。
子宮内膜症ができやすい場所として、腹膜、卵巣、子宮と直腸の間のくぼみ(イギリスの解剖学者の名に因んで、ダグラス窩と呼ばれます)などが挙げられます。
卵巣にできたものをチョコレート嚢胞といいます。出血したものが卵巣の内部に溜まって粘性のあるチョコレート状に変化したものです。これがまれにがん化することが知られています。40歳以上の人や、たとえ若くてもチョコレート嚢胞が10cm以上の場合は、注意が必要かと思われます。
個人差もありますが、子宮内膜症は繰り返し発生しやすく、卵巣や子宮を病巣ごと取り除く根治手術を受ける以外は、経過観察をしながら長く付き合っていく病気です。
子宮内膜症の症状について
代表的なものは「痛み」と「不妊」です。痛みの中でも月経痛は子宮内膜症の患者さんの約90%にみられます。この他、月経時以外にも腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などがみられます。卵巣チョコレート嚢胞による排卵障害や卵管癒着により、不妊になることもあります。こうした症状は20~30歳代の女性に多く発症し、加齢による女性ホルモン分泌の減少を境におさまります。また、妊娠を希望する生殖年齢の女性では「不妊」が問題となります。妊娠の希望のある内膜症患者さんの約30%に不妊があると考えられています。
子宮内膜症の検査について
まず問診を行います。そして内診で子宮、卵巣の可動性や痛みの有無をチェックします。その後超音波検査で子宮や卵巣の腫大の有無を調べます。腫大している場合にはMRIでさらに細かく診断していきます。また血液中の腫瘍マーカー(CA125やCA19-9)が増加してくるので血液検査を行ないます。
子宮内膜症の治療について
治療法は薬物療法と手術療法があります。また、手術後に再発を予防するため薬物療法がおこなわれることがあります。
薬物療法について
鎮痛剤
月経痛などの痛みを軽減するために使用されます。痛みの原因となるプロスタグランジンは子宮内膜で作られます。鎮痛剤にはこのプロスタグランジンを少なくする働きがあります。早めに服用するのが効果的です。
鉄剤
貧血を改善するために使用されます。子宮腺筋症や子宮筋腫のなかでも、特に子宮の内側に出来た場合は、月経量が非常に多くなり貧血を起こすことがあります。その際には鉄剤などで貧血の改善をはかります。
(超)低用量ピル
月経時の出血量を減少し、月経痛を改善するとともに症状の進行を抑えます。
ミレーナ(詳しく見る)
子宮内に装着する小さなT字型の避妊具です。黄体ホルモンが継続的に放出され、内膜を薄くする為、内膜症による出血量が減り、過多月経や生理痛などの症状を緩和します。
黄体ホルモン製剤
子宮内膜症・子宮腺筋症の進行を抑え、症状を改善します。
GnRHアゴニスト
女性ホルモン(エストロゲン)を低下させることで、病変を縮小し、さまざまな症状を軽減します。これらのほかに漢方薬や止血剤が用いられることがあります。
子宮内膜症の手術について
腹腔鏡手術の普及に伴って、重症の子宮内膜症の手術の多くは開腹ではなく、腹腔鏡手術で行われるようになりましたが、従来、婦人科の中でも難しい手術とされてきました。
子宮と強く癒着している卵巣や直腸は、剥離が容易ではないからです。