子宮内膜症について
子宮内膜症とは

子宮内膜症ができやすい場所として、腹膜、卵巣、子宮と直腸の間のくぼみ(イギリスの解剖学者の名に因んで、ダグラス窩と呼ばれます)などが挙げられます。
卵巣にできたものをチョコレート嚢胞といいます。出血したものが卵巣の内部に溜まって粘性のあるチョコレート状に変化したものです。これがまれにがん化することが知られています。40歳以上の人や、たとえ若くてもチョコレート嚢胞が10cm以上の場合は、注意が必要かと思われます。
個人差もありますが、子宮内膜症は繰り返し発生しやすく、卵巣や子宮を病巣ごと取り除く根治手術を受ける以外は、経過観察をしながら長く付き合っていく病気です。
子宮内膜症の検査について
まず問診を行います。そして内診で子宮、卵巣の可動性や痛みの有無をチェックします。その後超音波検査で子宮や卵巣の腫大の有無を調べます。腫大している場合にはMRIでさらに細かく診断していきます。また血液中の腫瘍マーカー(CA125やCA19-9)が増加してくるので血液検査を行ないます。
子宮内膜症の治療について
治療法は薬物療法と手術療法があります。また、手術後に再発を予防するため薬物療法がおこなわれることがあります。
薬物療法について
鎮痛剤
月経痛などの痛みを軽減するために使用されます。痛みの原因となるプロスタグランジンは子宮内膜で作られます。鎮痛剤にはこのプロスタグランジンを少なくする働きがあります。早めに服用するのが効果的です。
鉄剤
貧血を改善するために使用されます。子宮腺筋症や子宮筋腫のなかでも、特に子宮の内側に出来た場合は、月経量が非常に多くなり貧血を起こすことがあります。その際には鉄剤などで貧血の改善をはかります。
EP配合剤(エストロゲン・黄体ホルモン配合剤)
月経時の出血量を減少し、月経痛を改善するとともに症状の進行を抑えます。
黄体ホルモン製剤
子宮内膜症・子宮腺筋症の進行を抑え、症状を改善します。
GnRHアゴニスト
女性ホルモン(エストロゲン)を低下させることで、病変を縮小し、さまざまな症状を軽減します。これらのほかに漢方薬や止血剤が用いられることがあります。
子宮内膜症の手術について

腹腔鏡手術の普及に伴って、重症の子宮内膜症の手術の多くは開腹ではなく、腹腔鏡手術で行われるようになりましたが、従来、婦人科の中でも難しい手術とされてきました。子宮と強く癒着している卵巣や直腸は、剥離が容易ではないからです。
しかしここでも、ロボット手術が活躍する機会が増えています。鉗子の自由度が高く、手技に頼っていた剥離の作業を大いに助けてくれるからです。