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ボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法

難治性過活動膀胱の新しい治療法

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法

当院では過活動膀胱に対する 「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」を開始しました。 A型ボツリヌス毒素を膀胱内壁注射することで筋弛緩作用を示し、 過活動膀胱による種々の症状を改善する治療法です。

2020年より健康保険適用開始

    

過活動膀胱とは

「過活動膀胱」とは、膀胱に尿が十分に溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮するという病気で、急に尿がしたくなって我慢ができずトイレに何回も行く(尿意切迫感)、夜中トイレに何度も起きる、我慢ができず尿が漏れてしまう(切迫性尿失禁)などの症状が出現します。

国内の調査では、40歳以上の日本人の12.4%が過活動膀胱とされました。 この調査結果から、国内の患者数は1,000万人を超えると推定され、多くの患者さんが過活動膀胱に罹患していると言われています。

過活動膀胱の症状

薬物治療でも改善されない、続けることが困難な患者さまへ

過活動膀胱による頻尿、尿失禁の治療として、抗コリン薬(ベシケア®、トビエース®、ウリトス®など)やβ3アドレナリン受容体作動薬(ベタニス®、ベオーバ®)などの薬物療法が広く行われています。しかしながら、薬物療法では効果が不十分であったり、口渇、便秘、尿がでづらくなる、などの副作用のため飲み薬を継続できない場合があります。

そのような薬物療法が無効あるいは使用できない過活動膀胱の患者さんに対する次の治療法として、「仙骨神経刺激療法(SNM)」、「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」の二つの治療法の有効性が証明され、欧米を中心に広く行われてきました。日本国内でも2017年に過活動膀胱に対する「仙骨神経刺激療法(SNM)」が保険適応となり、そして2020年に「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」が保険適応となり、使用可能となりました。当院でも昨年からSNM治療を導入、そして2020年3月から「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」を開始しました。

世界90ヶ国で認められた高い安全性と有効性

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は2000年に初めて海外で報告され、その高い有効性と安全性から欧米を中心に普及している治療法です。A型ボツリヌス毒素は膀胱壁内に注入することで、膀胱の神経に結合し、筋弛緩作用(筋肉をゆるめる)を示し、過活動膀胱による種々の症状を改善します。ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、過活動膀胱をはじめ、 さまざまな疾患の治療薬として世界90ヵ国以上で認可されており、日本でもまぶたや顔面のけいれん、首や手足の姿勢異常、腋窩多汗症、斜視などに対して治療薬として用いられています。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法はどんな治療?

「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」は膀胱鏡というカメラを用いて膀胱の壁内(筋肉)にボツリヌス毒素を注射する治療です。実施に際しては、腰椎麻酔(下半身麻酔)、全身麻酔、膀胱局所麻酔(麻酔薬の膀胱内注入)のいずれかで行ないます。膀胱の筋肉に細い針でボツリヌス毒素を100~200単位、20~30箇所に分けて、分けて注入します。手術時間は10~20分程度です。外来でも治療可能ですが、東京国際大堀病院では患者さんへの安全性を十分考慮し、基本的に入院での治療をお勧めしています。日帰り治療をご希望の方は担当医とよく相談してください。

効果は通常、治療後2~3日であらわれ、4~8ヵ月にわたって持続します (効果の程度や持続期間には個人差があります)。効果が不十分な場合、または薬の効果が弱まり症状が再発した場合は、前回投与より3ヶ月経っていれば再投与を考慮します。再投与の時期については担当医にご相談ください。 難治性過活動膀胱に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、当科排尿障害外来にて慎重にその適応を検討し、治療を受ける患者様と十分な話し合いを行った上で治療を行っております。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法
    

副作用などはあるの?

副作用について

下記の副作用が出現することがあります(頻度は国内での臨床試験結果)。

肉眼的血尿(2%程度)

膀胱内に薬を注射することで、一時的に血尿がでることがあります。通常数日でおさまりますが、血尿がひどい場合には内視鏡で止血する必要があります(極めて稀です)。

尿路感染症(5%程度)

尿の出口から細菌が膀胱内に侵入することで膀胱炎、前立腺炎、腎盂腎炎などが生じることがあります。尿路感染により尿が濁る、頻尿、排尿時痛、発熱、悪寒、血尿などの症状が出現することがあります。

排尿困難、残尿の増加(5~9%)

尿を自分で全部出しきれず、膀胱内に尿がたまってしまう副作用です。投与後は残尿量を定期的に測定させていただきます。残尿量が多くなった場合は、改善するまで自己導尿(自分自身で尿道にカテーテルを挿入し尿を排出させる手技)を行っていただく可能性があります。

薬によるアレルギー反応(1%以下)

万が一アレルギーが出現した場合、吐き気、蕁麻疹、発疹、気分不快などの副作用が出現することがあります。重篤な場合には、喘息発作やアナフィラキシーショック(血圧低下)に至る場合があります。

「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」安全な治療法であることはわかっていますが、稀とは言え上記のような副作用が出現することがあります。したがって、東京国際大堀病院では患者さんへの安全性を十分考慮し、「入院し、手術室での治療」を推奨しています。
万が一、「濃い血尿」や「尿が出ない」などの副作用が生じた場合にすぐにチェックし対応できるようにするためです。基本的に入院期間は1泊2日で行います。ただし、日帰り治療をご希望の方は対応することも可能です。担当医とよく相談してください。
※ 治療後に何らかの副作用が出現した場合には、昼夜問わず病院代表(電話: 0422-47-1000)までご連絡ください。電話窓口で病院の診察券番号、氏名、出現した症状などをお話ください。当院では夜間も泌尿器科医師が常駐していますので、適切な対応をさせていただきます。

治療前の注意点

以下の条件に当てはまる方は、ボツリヌス療法を受けることができません。

  • 現在尿路感染症にかかっている方
  • もともと重度の排尿障害があり、自己導尿を行っていない方
  • 全身性の筋力低下を起こす病気(重症筋無力症、ランバート・ イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など)がある方
  • 妊娠中あるいは授乳中の方、妊娠している可能性のある方
  • 過去にボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法を受け、発疹などのアレルギーを生じることがわかっている方
  • 副作用で自己導尿が必要になった場合に、導尿の実施に同意いただけない方

また、以下の条件に当てはまる方は、ボツリヌス療法を受ける前に医師に申し出てください。

  • ボツリヌス療法を受けた経験がある方(そのとき治療した病気の名前、治療時期、投与量をわかる範囲で担当医に伝えてください)
  • 現在、なんらかの薬を使用している方(市販薬を含む)。一部の抗生物質や筋弛緩薬、精神安定剤など、ボツリヌス治療と同時に使用する場合は注意を要する薬があります。また、血液をさらさらにする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を服用中の方は、注射による出血を防ぐため、治療前後に薬の飲み方を調整する場合があります。
  • 慢性的な呼吸器の病気(喘息など)がある方

治療後の注意点

以下はボツリヌス療法を受けたあとの注意点についてです。

  • 治療当日のみ、入浴や激しい運動、飲酒など、血液の流れを増加させる行為は控えてください。翌日以降は、通常どおりの日常生活を送れますが、血尿が続く場合は改善するまで控える必要があります。
  • 女性は治療後2回の月経が終わるまで、男性は治療後3ヵ月が経過するまで、避妊に必要な措置をとってください。
  • ほかの医療機関や診療科を受診する際には、「過活動膀胱」に対してボツリヌス療法を受けたこと、および 治療時期をわかる範囲で医師に伝えてください。
  • ボツリヌス療法をくりかえし行った場合、きわめて稀に体内で 抗体がつくられ、それまで得られていた治療効果を得られなくなることがあります。複数回の治療を受けたのち、明らかに以前より効果が弱まっていると感じられたら、その旨を医師に申し出てください。
  • 治療後に、先述の「副作用」にあてはまる症状が出現した場合は、すぐに担当医に相談してください。
    

最後に

「過活動膀胱」は患者さんの命を直接脅かす病気ではありません。しかしながら、過活動膀胱の症状により、生活の質が大きく低下する場合、何らかの治療を行う必要性が出てきます。まずは飲み薬による薬物療法が過活動膀胱治療の第一選択です。薬物療法である程度の効果があった患者さんには、本治療法を勧めることはありません。薬物治療を行っているのにも関わらず治療効果が低く、過活動膀胱の症状で日常生活が制限され、日々悩まれている患者さんにはこの新規治療は朗報と思っています。治療希望の方はまずは泌尿器科担当医と、治療の適応、治療の利点、副作用につきよくご相談ください。