前立腺肥大症の治療について
内服治療
前立腺肥大症は原則として内服治療から開始します。
内服治療には尿道を広げる薬や、前立腺を小さくする薬を使用します。
当院では泌尿器科専門医が患者様の症状や前立腺肥大の重症度にあわせて内服調整を行ってまいります。
ただし、以下の場合には外科的治療をお勧めします。
(1)内服治療で効果が不十分な場合(中等度から重度の症状の場合)
(2)尿閉(膀胱(ぼうこう)に溜まった尿が出なくなること)を繰り返す場合
(3)尿路感染症や血尿を繰り返す場合
(4)膀胱結石を認める場合
(5)残尿が多いため腎機能障害が進行する場合
外科的治療
標準的治療法である「経尿道的前立腺切除術(Transurethral resection of Prostate:TUR-P)」よりもさらに安全で合併症の少ない「生理食塩水潅流(かんりゅう)経尿道的前立腺切除術(bipolar-TURP)」を採用しました。
また、従来は開腹手術を行っていたような大きな前立腺肥大症に対しても安全性が高く(出血が少ない)、有効性が高い(再発がほとんど無い)「ホルミウムレーザー前立腺核出術(Holmium Lasor enuculation of Prostate; HoLEP)」を採用しております。
比較的小さな前立腺肥大症に対しては前者を、中等度以上の前立腺肥大症では後者の治療を行っております。
これらの治療法はいずれも、日本泌尿器科学会が示すガイドラインにおいて推奨されている、最も低侵襲で安全な治療法です。
生理食塩水潅流(かんりゅう)経尿道的前立腺切除術(bipolar-TURP)
従来のTUR(経尿道的切除術:Transurethral resection)とbipolar-TURとの違いですが、従来のTURは、機器のシステム構成上、電流を通しにくい非電解質溶液を灌流(かんりゅう)液として使用します。
電解質溶液を灌流液に用いたbipolar-TURでは、組織と電極の接触状態によって切れ味が影響される従来のTURに比べ、電解質溶液を介して電極全周を放電させて切除することで、組織との接触状態にかかわらず安定した高い切れ味や安全性の向上が得られました。
また、電極全周で放電することで、切除片が電極に付着することが少なくなり、手術中のストレスも劇的に軽減されました。
当院ではKARL STORZ社製のReal Bipolar Resecto Systemを採用しております。
電流が身体組織を介さないシステムだけが真のBipolar systemであり、尿道組織への影響を軽減、閉鎖神経反射の可能性を低減することが可能となっております。

ホルミウムレーザー前立腺核出術(Holmium Lasor enuculation of Prostate; HoLEP)
中等度以上の前立腺肥大症に対して主として「ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)」による内視鏡手術を行っています。HoLEPは前立腺肥大症に対する新しい治療法であり、内視鏡の先についたレーザーメスで肥大した前立腺腺腫を安全・確実に切除していく手術です。
従来の標準的手術術式であった経尿道的前立腺切除術(TURP)に対して、以下のような多くの利点があります。
(1)出血が少なく輸血のリスクが低い
(2)切除(削る)ではなく核出(くり抜く)なので前立腺の大きさに制限なくTURPでは困難だった大きな前立腺に対しても施行可能
(3)核出(くり抜く)という手術方法から前立腺の取り残しがないため再発が少ない
(4)手術中に使用する潅流液が生理的食塩水でありTURPで問題となる低ナトリウム血症が起きない
(5)手術後の入院期間の短縮が可能
入院期間はは4〜5日程度になります。(経過により延長することがあります)。


その他の治療
経尿道的前立腺吊り上げ術(Urolift)
UroLiftシステムによる治療法は「経尿道的前立腺吊上術」とも呼ばれ、米国泌尿器科学会と欧州泌尿器科学会の両方のガイドラインにて、前立腺肥大症の治療として経尿道的前立腺吊上術が推奨されています。世界中の一部の市場で、30万人以上の男性がUroLiftシステムで治療を受けています。
尿道ステント留置術
前立腺の中を通る尿道にステントを挿入し、尿の通り道を開通させ、排尿できるようにする治療法です。主に前立腺や神経因性膀胱、尿道狭窄の治療に有効とされていますが、尿道カテーテル(尿道バルーン)でお悩みの患者様にも効果的な治療法です。