腎盂尿管移行部狭窄症の治療(ロボット支援下腎盂形成術)について
腎盂尿管移行部の狭窄(きょうさく)とは?
腎臓でできた尿は腎盂という袋にたまり、その後尿管を流れ膀胱に到達します。
その腎盂から尿管に移行する場所(腎盂尿管移行部)が狭くなり、尿が流れにくくなると腎盂が腫れて(水腎症)、腰や背中の痛みに繋がったり、腎機能の低下に繋がります。その狭くなる原因は様々ですが、先天性、腫瘍性、結石によるなどがあります。
腎盂尿管移行部狭窄症の診断方法
- 腎盂尿管移行部狭窄症の症状
- 腰背部痛
- 血液・尿検査
- 腎機能や感染の有無を確認
- 超音波検査
- 腎臓の腫れ(水腎症)を確認
- CT検査
- 水腎症を確認し、狭窄部を確認。狭窄の原因となる交差血管を確認
- MRI検査
- CTと同様。腎機能が悪い人に有用な検査
- 核医学(腎シンチグラフィー)
- 機能を詳細にチェックする有用な検査
多くの場合、これらの検査で診断がつきます。原因の中で腫瘍(腎盂がん、尿管がんなど)の場合は腎臓や尿管を摘出する手術へ移行します。結石の場合は、結石の破砕の治療なども合わせて実施する必要がありますが、腎盂尿管移行部の狭窄を放置はできませんので、同時あるいは時間を変えて治療する必要があります。
ロボット支援下腎盂形成術
狭窄が起きると尿管ステントの挿入で一時的に腎機能は維持でき、疼痛も治まりますが根治には至らず、最終的には手術で狭窄部を切除し形成する手段しかありません。1949年にdismembered Anderson/Hynesという方法が提唱され、現在に至るまで標準的治療とされてきました。初期には開腹手術のみで大きく開腹し、直視下で細かい縫合手術を実施してきました。その後、1993年に腹腔鏡手術が出現し、出血の少ない、疼痛の少ない低侵襲でさらに開腹手術と比較し、腎機能の結果も良好で新たに標準治療と認められてきました。しかし、腹腔鏡では腎盂の形成時の縫合は極めて難しく、習得するまでの長期間を要し、結果的に手術時間も長くなる傾向があり問題でした。これを解決するのがロボット手術で、10倍以上に拡大した視野で、自由度の高い鉗子により細かい正確な縫合が可能となりました。既に泌尿器科では前立腺癌、腎部分切除術、膀胱全摘術で標準的な治療方法となっています。ロボット支援下腎盂形成術も2020年4月に保険収載となり、既にその利点・安全性は確認されています。
当院ではダビンチによるロボット支援下腎盂形成術(腎盂尿管移行部狭窄症の治療)を積極的に行っております。
手術の流れ
①狭窄部を大きく切開する(左側の腎盂形成)
②細い糸で腎盂と尿管を縫合する。
③完成図。狭窄部を切除し、大きく広げた腎盂と尿管を原因血管の前で縫合して際狭窄が起きないようにする。
ポートの位置
個々の体系などにより異なりますが通常は腹部に4箇所(多くても5箇所)に穴を開け、ポートを挿入します。
左図下図:ポート(ロボットの内視鏡や鉗子を入れるための筒)の位置の典型例(左側の腎盂形成の時)
手術の概要
全身麻酔
手術時間:約1〜3時間
手術中、尿管ステントを挿入
6週間後に外来で抜去予定5日から10日間の入院