更年期障害について
更年期障害について
更年期障害は、閉経に伴い卵巣の働きが衰え女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌が急激に減少することで起こります。
エストロゲンの分泌量が減少すると、今までエストロゲンによって調整されていた体のいろいろな機能がうまく働かなくります。エストロゲンが低下すると脳は卵巣に対して、もっと女性ホルモンを出すようシグナルを送ります。
エストロゲンが出ない為、脳が周囲の組織に不要なシグナルを与えてしまい、自律神経の調整がうまくいかなくなります。その為、神経の調整不良や心身の不調が起こりやすくなる状態となってしまいます。特に日常生活にまで影響を及ぼす場合を更年期障害とよび、治療が必要となってきます。
更年期障害の症状について
更年期障害は人によって様々な症状が出てきます。更年期障害とよく似た、まぎらわしい症状もあります。自分で更年期障害と判断せずまずは病院で正しい診断をしてもらうことが大切です。
主な症状は、自律神経失調症状(のぼせ・ほてり・息切れ・冷汗・動悸・冷え・腹痛・腰痛・不眠・イライラ)や精神神経症状(不安・不眠・うつ・孤独感・頭重感)などを主訴とした症候群です。
自律神経失調症状
精神神経症状
更年期障害の治療について
更年期障害は身体的因子・精神的因子などが複雑に関与していますので、まず十分な問診を行います。そのうえで生活習慣の改善や心理療法を試み、それでも改善しない症状に対して薬物療法を行います。よく話し合いながら、その人に合った最適な最適な治療法を選択します。
ホルモン補充療法(HRT)
更年期障害の主な原因がエストロゲンの減少にあるため、エストロゲンを補う治療法(ホルモン補充療法:HRT)を行ないます。HRTはのぼせ・ほてり・息切れ・冷汗・動悸・冷えなど血管の拡張と放熱に関する症状に特に有効ですが、その他の症状にも有効であることがわかっています。エストロゲン単独では子宮内膜増殖症のリスクが上昇するため、子宮のある方には黄体ホルモンを併用します。HRTに用いるホルモン剤には飲み薬、張り薬、塗り薬、などいくつかのタイプがあり、又その投与方法も様々です。HRTに関しては最近になって、更年期にHRTを開始した人では心臓・血管の病気や骨粗しょう症など老年期に起こる疾患が予防できるという利点が再び見直され始めています。
漢方薬
漢方薬はさまざまな生薬の組み合わせで作られており、全体的な心と体のバランスを回復させる働きがあります。多彩な症状を訴える更年期の女性に対しては「婦人科3大処方薬」とも呼ばれている当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸を中心に、症状に応じた様々な漢方薬処方を行います。
向精神薬
気分の落ち込み・意欲の低下・イライラ・情緒不安・不眠などの精神症状が最もつらい症状である場合には、抗うつ薬・抗不安薬・催眠鎮痛薬などの向精神薬も用いられます。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの新規抗うつ薬は副作用も少なく、ほてり・発汗などの血管の拡張と放熱に関する症状にも有効であることが知られています。