尿道カテーテル(尿道バルーン)でお困りの男性患者さんへ 「尿道ステント」を入れることで、尿道カテーテルが抜ける可能性があります。
排尿障害について
多くの男性は加齢にともない前立腺が肥大し、尿が出にくくなります。また加齢とともに膀胱機能が低下し、膀胱が収縮し排尿する力も落ちてきます。尿がでにくくなる状態を排尿障害と言いますが、重症になると、膀胱に尿がたくさん溜まっているのにも関わらず、自分で尿を全く出せなくなってしまいます(尿閉と言います)。また重度の糖尿病がある人、寝たきりの状態で活動性が低下した人、脊髄疾患や脳血管疾患の後も、膀胱の機能が低下し尿閉になることがあります。
膀胱に大量の尿が貯留し排出できない状態が続くと、尿を作る腎臓に負担がかかり、腎不全(尿毒症)の状態となり、最悪命に関わる場合もあります。したがって、溜まった尿を体外に出すための治療が必要です。
治療には一般的に薬物治療、手術治療(内視鏡下前立腺切除術)、自己導尿(自分で尿道に細いカテーテルを挿入し排尿する)が選択されますが、薬物治療が効かない場合も少なくありません。またご高齢のため手術治療が受けられない場合や、自己導尿を行うことが難しい患者さんもいらっしゃいます。その場合、尿道カテーテル(尿道バルーン)を挿入し尿を出す治療がやむを得ず選択され、1カ月に1回程度の頻度で定期的に交換をしなければなりません。尿道カテーテルは尿を確実に体外に出すことができる治療ですが、患者さんの苦痛やカテーテルに関連したトラブルが多いのが問題です。
尿道カテーテルが挿入された場合、以下のトラブルが生じる可能性があります。
- 「尿道や膀胱の痛みがある」
- 「カテーテルが詰まってしまう」
- 「カテーテルが繋がっており、日常動作に制限が出てしまう、外出が億劫になる、旅行に行きたくない」
- 「カテーテルが引っ張られ、尿道が傷ついてしまう」
- 「ばい菌感染がおきて尿が汚れてしまう」
- 「定期交換が痛い・つらい」
このようなカテーテルのトラブルが生じた場合、「尿道ステント」を挿入することで、それらの悩みから解放される可能性があります。
尿道ステントとは
前立腺の中を通る尿道にステントを挿入し、尿の通り道を開通させ、排尿できるようにする治療法です。
尿道ステントが有効な排尿障害
前立腺肥大症
尿の通り道である前立腺が肥大し、通り道を塞いでしまう病気です。
神経因性膀胱
膀胱の収縮機能が低下し、尿が出しづらくなる病気です。脳血管疾患(脳梗塞・脳出血など)、脊髄疾患、神経疾患、糖尿病、骨盤内手術後(直腸がん、子宮がんなど)などの病気で起こることがあります。
尿道狭窄
尿の通り道である尿道が狭くなり、尿が出しづらくなる病気です。陰部の打撲(事故など)、尿道炎、カテーテルなどによる尿道損傷などで起こることがあります。
東京国際大堀病院における「尿道ステント治療」の方法
- ①外来の膀胱鏡(内視鏡)室、あるいは手術室で行います。
外来治療も可能ですが、ステントを挿入した後に尿がきちんと出せるかを確かめる必要がありますので、短期間の入院が推奨されます。 - ②処置の時間は30分程度です。
- ③尿道に麻酔薬の入ったゼリーを注入し麻酔を行います。この麻酔で治療中はあまり痛みを感じません。
- ④膀胱鏡(柔らかなファイバースコープ)を尿道に挿入し、患者さんに最適な長さのステントを決定します。
⑤尿道ステントを膀胱鏡で見ながら挿入していきます。
ステントの位置をレントゲンで確認します。
- ⑥ご自身で排尿できるかを確認して治療終了です。
※血液をさらさらにする薬(抗血小板薬)を内服されていても治療は可能です(中止できる場合は一時的に中止します)。 - ⑦尿道ステントは結石が付着してしまうため、半年〜一年おきの交換が推奨されております。
尿道ステント治療の合併症
尿道の痛み・違和感
尿道ステント挿入後2〜3日で改善します。痛み止めなどを使用し対応いたします。
尿路感染症
稀に前立腺炎、膀胱炎などのばい菌感染症が起きることがあります。治療の際には抗生物質の投与を行います。重症の感染症が生じた場合は入れたステントを抜かなければならない可能性もあります。
肉眼的血尿
尿道が擦れることで血尿が出ることがありますが、数日以内に改善します。
尿失禁
尿道ステントが挿入されたあと、尿が無意識に漏れることがあります。その場合は尿道ステントの位置を修正する可能性があります。 膀胱の収縮機能が悪い患者さんの場合には、尿を我慢する括約筋にステントを通し、わざと尿が漏れるようにすることがあります。その場合、オムツでの対応が必要になってきます。
ステントへの結石付着
尿道ステントに結石がまとわりつき、塞いでしまう可能性があります。
ステントの位置の異常:転倒などの衝撃でステントの位置が変わり、尿が漏れるようになったり、逆に尿が出せなくなることがあります。ステントの位置を最適な位置に修正することで改善することが可能です。
排尿困難
尿道ステント挿入後も、うまく排尿ができない場合があり得ます。その場合、ステントの位置や長さを変えるなどの方法を試みますが、やはりうまく尿を出せない可能性があります。その場合はやはり尿道カテーテルを再度入れなければなりません。
最後に
尿道ステント治療後にやはり尿道カテーテルに戻したいという患者さんもいらっしゃるかと思います。尿道ステントは簡単に抜くことができ、治療前の状態に戻ることができますので、一度試してみる、といったことも可能です。
尿道ステント治療は医療保険が適用されます。また高額療養費制度が利用可能です。尿道ステント治療についての費用は、病院窓口でお尋ねください。
尿道カテーテルは一旦挿入されてしまうと、あとは特別な検査などがなされず、永久的に交換が続くということがよくあります。尿道カテーテルが付いたままの生活は、患者さんもご家族にとっても決して楽なものではありません。尿道ステントを挿入することで絶対に尿が出せるようになるとは言えませんが、抜ける可能性を目指し、一度試してみるべき治療法と言えます。尿道ステント治療をご希望の方は、是非一度 東京国際大堀病院 泌尿器科外来でご相談ください。